FORNET』2001 /8月号

消費という「結果」に至る「原因把握」が経営の基本

--- One to one市場へのアプローチ ---

顧客化の基本を抑えた「e-deliv@」
ランチェスター経営社長の竹田氏とマルチメディアステーション柏社長対談

「経営のほとんどは顧客活動であるべき」というランチェスター経営(株)(福岡市中央区渡辺通2)の竹田陽一社長とフェイス to フェイスの既来店客向け情報提供通信ツール「e-deliv@」を開発したマルチメディアステーション(株)(福岡市中央区大名2)柏修次社長に、一致する消費・購買の基本について話を聞いた。

経営とは「お客をつくること」新規獲得は既来店客より遥かに困難

最近は携帯メールを使用した商品PRやイベント、サークル勧誘告知などの情報が氾濫しています。その多くが、無責任な「ダメもと」的発想。受け取り側からすれば、「社会悪」という印象さえも持ちます。
その点、客商売の原点を重視した「e-deliv@」の発想はお客作りが経営の原点であるとの観点から竹田先生も興味を持っておられるとお聞きしました。本日は普遍的な客商売の顧客化と通信技術による固定客づくりの方法についてお二人にお話を伺います。まず竹田先生に「顧客化」についてお聞きしたいと思います。


そもそも経営とは何を果たす作業かというと、お客を作ることです。自社、自店舗の商品を一度も買ったことがない人をいかに見つけるか、次にその見込客に対していかに買ってもらうか。いかに満足してもらうか。そして、いかに継続して買ってもらうか、ということです。
このようにそれぞれの段階で手の打ち方が違ってきますが一貫していないとだめです。ガッツが前面に出る経営者の場合、新しいお客の開拓にはものすごいエネルギーを使うけど、往々して購買後は取引きが御留守になってしまいがちです。実際はまったく新しいお客を探すより、一度買ったお客に対するアプローチの方が少なくとも五倍は効果的です。十倍といっても過言ではありません。

しかし、そこに気がついている経営者が以外に少ない。
竹田

最近では多くの経営者が「one to oneビジネス」「地域密着」としきりに言いますが、往々にして言葉だけが一人歩きしています。本当に気がついている人は少ないですね。
そのお客様にまた来てもらいたいならば、そのお客様の事ばかり考えたらいいんですよ。考えるにはお客の情報が必要になる。

例えばどの対象への、どの情報でしょう。
竹田

私の場合は「経営のビデオテープの大成」に命を賭けています。この応接コーナーはビデオで一杯なのに、セールスで来た人は100人に1人もその話題をしない。皆「キャンペーン中です。買いますか?買って下さい」と結果を急ぐ話ばかり。これでは買う気持ちになれませんよね。

メールやFAXとなると一方通行ですから余計に竹田社長が言われる「意思疎通」を図る内容が重要になります。柏社長が考案した「e-deliv@」はチラシ、DMなど、従来の一斉同報ツールによる顧客誘導とどこが違うのですか。

自分が買う側、つまりメール配信を受ける立場で考えれば「自分のために送ってきた有益な情報」というニュアンスがすぐに感じ取れるかどうかが重要だと判断しました。単なる情報提供だけではない心の疎通です。手紙、DMでもそれはできるでしょうが手書きでは手間やコストがかかる。電子メールであれば、様々な業種で利用してもらえると言うメリットがあります。例えば飲食店であれば個人ごとにその方の好物メニュー、衣料品店ならブランド名を特定するなど小窓を変えることで誘導の確率が高まります。

購買経験者に対するアプローチが新規客に比べ、高い確率で購買につながるという竹田先生の話とも一致するわけですが、「電子メール」という手段は携帯電話を持つ、若い層に限られますね。

「メール」「ウェブ」「FAX」「PC」「手紙」に対応

当然、そこが問題です。携帯メールに限らず一方でFAXでもコンピュータでも、さらに郵送でも送信できる仕組みにしています。これは色々な対象に使ってもらいたいという思いからです。ですからある年齢層以上は手紙でアプローチということも可能です。心を通わせるのであれば、逆にある程度年配の方が対象になるべきとも思います。

作業面では店舗側が煩わしいなどの問題はありませんか。

数十件でも数十万件まで管理、送信などを当社で賄うことができます。ただ、作業は簡単なので、直接操作した方が、リアルタイムで管理数値を見ることができるなどメリットが大きい。
実際にリピート率が上がる状況を目の当たりにすることが各店舗のスタッフの励みにもなります。

竹田先生、その対象になる業種として挙げられるものにはどのような店舗があるでしょうか。

竹田

以前、広島ですごい理髪店があると聞き、訪問しました。理髪店のお客が集中するのは、土日の終日と次いで平日の夕方で平日の午前中、昼下がりは非常に少ない。人件費など固定費は一緒ですから、これは業界共通の悩みです。
そこで、理髪店のオーナーは「昼間でも堂々と来ることができる人は誰か」と考えたわけです。でた答えは「経営者」。「来月の計画の為にちょっと床屋に行って来る」といったセリフが堂々と言える役目の仕事をしている人です。そこで、毎日、経営者にそのようなメッセージを送った。
また、率直に「社長この時間帯にぜひ来て下さい」と言えば、かなりの人が来てくれますよ。心が通う常連が平日の閑散としていた時間帯に集まりその時間帯の売上が全て利益になったということです。
ここで、大切なのはその人の情報は店の情報にしなくてはいけないということ。1人のスタッフの情報にしていたらその人が辞めたらそれまでです。伸びている通信販売業者が採用しているソフトは、顧客から電話がかかると、その人のデータがたちどころに目の前のボードに出て、購入暦と箇条で入った関心事でリアルタイムで話ができる。
本来はその人の本来のニーズは簡単には言えない。その上に二段階の趣味などの情報があり、また上に何をいつ買ったか、年齢、男女など表層の一段階があります。

段  階

顧 客 デ ー タ
第1段階 初歩データ(氏名、男女、年齢他)
第2段階 現在の関心事
第3段階 ライフワーク等
三段階目の顧客情報を把握することがポイントですね。
竹田

そうです。しかし、簡単に自身の奥底は見せない。だから「購入」という結果をもたらした「原因」をいかに正確につかむことができるかがカギになります。三段階目の情報を掴んで、始めて、one to oneマーケットが唱えられる。
MMSが発想した「e-deliv@」はそうした基本的考え方に沿っていることは間違いない。その人ならではのニーズ情報を踏まえて案内することは、きわめて効果的です。一、二段階の情報でも根底の考え方が同じということの意味が大きいですね。正直に一段階から入りジワリと情報を仕入れていくことです。

「e-deliv@」は名前や購入品目の他、どのような項目を設定できるのですか。

来店時間、客単価、注文の中身などですが、業態やエリア特徴など、ケースによって様々です。竹田先生がいわれるよう押し付けではなく来店された方々の立場で心のこもった情報提供システムです。

竹田

最近、売り手はよく「囲い込み」という表現をします。実際には売り手が「囲い込む」資格はない。少なくとも私は囲われた覚えはない(笑い)。お客の定着は、いかに好かれて、気に入られて、忘れられないようにするかです。それはお客様から「喜ばれること」「役立つこと」をするしかない。顧客活動に、合理化や採算性を計算に入れたら絶対だめ。会計学は売り上げた後の話。そして経営のほとんどは顧客活動であるべきです。

現在、案内先の反応はどうですか。

関西の百貨店でも前向きに検討していただいていますし、規模の大小、業種を問わずご案内しています。よく、「顧客情報は収集しています」と言われますが、実際はデータ収集による結果はでていないところがほとんどです。「e-deliv@」に対する関心は予想以上に高いようです。

顧客個人のページも設置可能
その他の特徴については。

顧客のための専用ウェブページに飛べるサービスも提供できるようにしています。そしてお店側からはその顧客がどの経路で情報を仕入れたか、何に最も関心が高かったのかが追跡できるよう工夫しています。また、インタラクティブに顧客から店側へ返信もできるようにしています。

竹田 それはいいことですね。

最初のアプローチがone to oneの取り組みですから、会話が成立するような、今風に言えば「メル友」感覚で双方向の情報交換が自然とできるような仕組みにはしています。お客様からお店側へのアクセスについても現場からの声を大事にしていきたいと思います。

「従業員三十人以下で顧客重視の店舗」(竹田)
竹田先生が考える「e-deliv@」に有効な規模はどのようなものでしょうか。
竹田

柏社長には従業員三十人以下の会社に案内し、データと提案材料を積み重ねていくことを薦めますね。顧客の二、三段階情報を集める努力ができる規模の店です。そして顧客の情報に重要性をすでに理解しているオーナー。これは話が早い。
それから、お金を持っていなくても定期的に誰かにギフトを贈るということもある。たとえば、恩師、仲人などの情報も大きい。「竹田様、今年の□月□日の○○様へのお花の贈り物はいかがいたしましょうか。△花屋」といったサービス。きっかけは随分あるでしょう。

私自身が様々な業態の小売店オーナーとしの疑似体験を重ね、各オーナーの要望を取り入れています。提案型に移行していくことが「システムを採用するか否か」の次の段階と感じています。囲い込みではなく「お客様があなたの店のファンになるためのプロセスを提供するシステムです」というフレーズで提案をしていこうと考えています。

竹田

それはいい言葉です。ソフトだけの力に陥らず初心を大切にしてください。いろんな意見と実績、反省を取り入れて真似できない本物を作ってください。応援しています。

本日はお二人ともありがとうございました。
竹田陽一・ランチェスター経営(株)社長
経営コンサルタント。福岡市久留米市出身、1938年10月3日生まれ、62歳。福岡大学経済学部卒業、83年に『ランチェスター経営』を設立。主な著書に『一枚のハガキで売上を伸ばす法』『社長の力を3倍に高める法』『ランチェスター社長学』『人生を逆転させる最強の法則』などがある。
柏 修次
マルチメディアステーション社長

 

 

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